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ssh193 ssh的秋葉原通り魔事件考
 25歳の若者が通り魔事件を起こし17人を襲い7人を死亡させ10人を傷害した。
 これがこの事件のすべてである。
 それ以上でもないし、それ以下でもない。

 よくある事件、ではない。
 仕方のないこと、ではない。
 それはこの事件を過小に受け止めている。
 大事件である。通り魔事件としてもかなり大規模である。
 痛ましい事件である。悲しみの深い事件である。
 

 しかし。

 
 過去に類を見ない事件、ではない。
 現代特有の事件、ではない。
 それはこの事件を過大に受け止めている。
 通り魔は過去にもあったし、どこにでもあった。今もある。
 大規模な事件もあった。これが飛び抜けているわけではない。
 現にマスコミも「過去10年で最悪」と言っている。11年以上遡ればこれ以上の事件があるということだ。

 
 「少年犯罪データベース」にまとめられた昭和以降の通り魔事件だけで146件。
 うち殺人(未遂は除く)は43件、3人以上が死亡した事件は10件。
 1999年9月には「山口県下関市のJR下関駅構内で、運送業(35)がレンタカーで突っ込んで轢いてから包丁で5人を刺殺、10人を負傷させて逮捕された。一審二審とも死刑判決。」という、この事件にそっくりな事件も起きている。

 繰り返すが、今回の事件は、25歳の若者が17人を殺傷した通り魔事件である。それ以上でもそれ以下でもない。
 だが、メディアの対応はそうではない。
 メディアは容疑者の履歴を徹底的に暴く。TVは被害者の生前の様子を悲しいBGMに乗せて流す。
 それが繰り返される。

 そうして、25歳の若者が17人を殺傷した事件は、
 無数のアブナイ奴が、罪もないアナタやワタシをいつも狙っているという物語へと肥大していく。
 その肥大した不安感が、誰かの利益のために活用される。
 
 悲惨な事件は、オオゲサに受け止めるほど周囲のウケがいい。 
 僕のように冷めた目でいる人間は無理解で非情な奴として排除されてしまう。
 そうして、いかにも真面目に深刻に受け止めているような顔をした人たちが
 単に自説を展開するためだけにこの事件を利用し、
 不安感を煽る言葉で視聴率や部数を稼ぎ、
 アナタにGPS付きケータイや護身術やホームセキュリティシステムを勧め、
 街に監視カメラをいそいそと取り付けてアナタを見張るのである。

 ある種の知識人にとって、悲惨な事件も自説を宣伝するためのネタに過ぎない。
 ある種の人たちにとって、悲惨な事件すら単なるビジネスチャンスに過ぎない。

 三たび繰り返す。この事件は、一人の若者が17人を殺傷した通り魔事件だ。
 今、まず、僕達のすべきことは、事実を事実のサイズのまま受け止めることだ。
 いつの時代も、悲惨な事件はあったし、今もこうしてある。
 たぶんこれからもあるだろう。
 残念なことだが、人間社会にはこういう事件がどうしても時たま起こる。
 この種の事件を完全になくす特効薬などない。
 銃やナイフがなくても通り魔はできる。包丁でも針金でも薬品でもクルマでも、何でも凶器にできる。
 特効薬がない以上、抜本的な対策なんか期待しないことだ。
 お上や知識人にすべてを任せたりしないことだ。何かを買うことで安全になったつもりになんかならないことだ。

 「少年犯罪データベース」収録の昭和以降の通り魔事件で死亡した人は50人ほどだ。
 無視していいはずのものではないが、しかし年に1人にも満たない数だ。 
 僕やアナタが通り魔に人生を奪われる可能性はゼロではないがしごく低い。少なくとも交通事故死の数千分の一の可能性でしかない。

 しつこく繰り返す。1人の若者が17人を殺傷した事件である。
 それ以上でもそれ以下でもない。

PS
 この事件については「社説の読み方」として展開するつもりでいたのですが、maiさんに先を越されてしまいました。こちらのリンク先に私が考えていたことはあらかた入っておりますので、御覧ください。

PS2
 この記事を書いた翌日、「少年犯罪データベース」のブログ部分である「少年犯罪データベースドア」がこの事件を扱っています。
 これによると、少年犯罪データベースに収録されている通り魔事件はほんの一部で、戦前から昭和30年代にかけての通り魔事件は、管賀氏がチェックした新聞だけでも毎年200件以上に上り、つまりほぼ毎日この国のどこかに通り魔事件が発生していたことになるということです。
 

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