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セザンヌからピカソへ―ヴォラール画廊の傑作@オルセー美術館

De Cezanne a Picasso: Chef d’oeuvre de la galerie Vollar
2007年6月19日~9月16日






















セザンヌ、『ヴォラールの肖像画』、1899年


アンブロワーズ・ヴォラール(Ambroise Vollard, 1866-1939)は、19世紀末~20世紀初頭のフランスの画商で、展覧会のタイトルの通り、セザンヌからピカソまで現在現代美術を代表すると考えられている芸術家たちをプロモーションしたことで知られています。この展覧会は、芸術家たちが主役なのではなく、この画商が主役です。

一般に画商という職業は、芸術家と収集家の間に挟まれてあまり日の当たらない立場だと思いますが、実は、画商は批評家と並んで、アカデミーという芸術判断基準が崩壊したこの時代(19世紀末)の美術の最大の立役者だと言っても過言ではありません。

一人のアーティストをテーマにした展覧会は一番よくあるパターンです。また、○○コレクション展という、収集家を軸にしたテーマの展覧会もよく見かけます。しかし画商がテーマになっている展覧会というのは珍しい。それは、現実的に、作品というものが収集家(個人または団体)のところに収束する傾向にあり、もし売られなかった場合でも作者本人のところにとどまって死後にまとめてひとつの美術館に寄贈される可能性が高いからではないでしょうか。前者の場合、収集家をテーマにしたコレクションがしやすくなり、後者の場合は一人のアーティストに絞ったコレクションがしやすくなるわけです。そしてこの流通の中で、画商というのは仲介屋でしかないので、そこに作品がとどまるということは少ないのです。
しかし、画商の重要性というのはそういった表面的な現象に反比例しているわけです。彼の手を渡って売買された作品の数、作家の数、取引の前後での作品の価値の変動を見ることによって、いかに画商の介入が重要であるかがわかります。

この展覧会は以上に述べたようなことを具体的に知るよい機会でしょう。
1890年、まだ学生だった頃、ヴォラールは画廊での仕事を始めますが、5年後には、歴史の残るセザンヌの初の個展、及びそのころまだ無名に近かった没後5年のゴッホの個展を開催し、その後も続々と新進気鋭の画家たちの個展・グループ展を企画します。ゴーギャンのタヒチでの暮らしを経済的に支援したのも彼で、1903年ゴーギャンの死に際して回顧展を開きました。ドガ、ルノワール、ナビ派、野獣派(マティス、ドラン、ルオー)、ピカソなど交流のあった画家の名前は挙げると切りがありません。

ヴォラールは画家がブレイクする直前に絵を買い取り、それを直後に10倍ほどの値段にして売ったりします。その間もちろん自分で個展を開催したり、以前から援助をしたり親交を深めたりして精力的に準備している。また、国内では認められそうにない画風の場合、ロシアやアメリカなどの外国の収集家へのアピールも怠りません。作品を見る眼だけでなく、時流をとらえる力、あらゆる方面の戦略を勢力的に試みる活発さがなければここまでの成果をあげるのは無理でしょう。
ただ、展示された作品を見ていくうちに、知らない作品も結構あったりして、彼の好みの傾向や、売買における成功と失敗を分けるものの不確定性が浮かび上がってきます。有名な芸術家ばかりが紹介されていますが、他にどんな作家を扱っていたのか調べればもっと面白いものが見えてきそうです。

また、最終章で紹介されているように、ヴォラールは版画や陶器の製作を、油絵や彫刻が本業である芸術家たちに依頼し、他のメディアを使った宣伝にも貢献しました。当時画家であったマイヨールに彫刻の道を勧め、そのキャリアを決定づけたのも、ピカソに本の挿絵を依頼し、海外への彼の名声を広めるのに寄与したのも、このヴォラールです。
ヴォラールは、無名な芸術家たちを探し当て、彼らの才能を信じて育てたり宣伝したりすることによって、彼らのキャリアアップに大いに貢献している。そしてそれと同時に、長年理解されなかった孤高の芸術家たちを、いち早く見つけ出していたという先見の明により、ヴォラール自身も、預言者の称号を与えられるわけです。

20世紀初頭のフランス絵画史を作ったとも言える、この作家と画商(時には批評家や収集家)の二人三脚にスポットライトを当てたこの展覧会はお勧めですよ!

公式サイトはこちらから



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